業界騒然!住友不動産販売の挑戦!

はい、どうもー。水曜日の不動産です。さて、みなさん日本史は好きですか?僕は日本史もあんま得意じゃないですが、やっぱり歴史の転換点となるような事件は興味あります。ちなみに歴史上の事件は「変」とか「乱」とかって名づけられていますが、あの違いは体制が大きく変わったとみなされた場合は「変」、単に世相を乱しただけと判断された場合は「乱」と使い分けされているそうです※。今回はそんな業界の歴史の転換点になるかもしれない大手不動産屋さんの挑戦をご紹介します。
※諸説あります

業界を変えることができるのか

「不動産屋さん」というと、一般的には不動産仲介業を指すことが多いです。その不動産屋さんのなかで住友不動産販売株式会社(以下「すみふ」といいます。)は国内売上高第2位(公益社団法人不動産流通推進センター発表)を誇る押しも押されぬ超大手仲介業です。最近、このすみふが実にチャレンジングなことを始めました。

すみふが始めた「物件情報紹介システム」とは

さて、すみふは2021年7月から「物件情報紹介システム」なるものを始めました。これにより不動産業者がすみふに仲介を頼んで物件を買うためには従来は付き合いのある担当者に物件を紹介してもらっていたのですが、もれなく本部の行う競売に入札して落札することが必要になりました。※

※個人や不動産業以外の法人などが物件を買う場合は普通に支店で担当者が紹介します。あくまで不動産業者が物件を買う場合限定です

背景

すみふがこうしたことを始めたのは、コンプラ上の課題を解決することであろうと思われます。

すみふにいるかどうかはちょっと解りませんが不動産屋には問題行為をする営業部員がいると言われています。具体的には、キックバックや担当者ボーナスといわれるお礼を密かに買主から個人的に受け取る不心得者です。特に、売買価格が高いほど自社の仲介手数料も高くなるはずなのにそうした業者に優先的に安く売られてしまうと仲介会社としては自社の利益を損ねますし、物件を少しでも高く売りたいお客様のためにもならない利益相反行為です。

しかしながら不動産仲介会社はこれを完全排除できずにいました。なぜかというと、お金を渡す方も受け取る方も両方美味しくて、それを他に漏らす動機につながることがなく露見しにくいためです。そこで、すみふはこうした悪事に加担することが多い不動産業者を買主とする取引を支店に独断ではやらせずに必ず本部のオークションに入札させるようにし、お客様のご心配を払しょくしようとしました。すみふ偉い!

他の不動産屋はやらないの?みんな悪徳業者なの?

リアル『正直●動産』を目指したい我々としても、すみふのような大胆な施策をとってお客様にご安心いただきたいと思うのですが、課題もあります。端的にいうと以下のような短期的(多分)な競争力の低下の影響力が測れないことにあります。

  1. 取引数の減少
  2. 取扱い物件数の減少
  3. 優秀な従業員の退職

リスク1 取引数の減少

不動産業者と、個人や不動産業者を除く一般事業者との違いは何でしょうか。最も大きい点は反復取引の有無です。いうまでもありませんが、不動産業者は何度も取引をします。多くの個人のお客様はご自宅のお買い上げが主な目的で複数回買う人は少数です。一般の事業会社も一度物件を取得したら事業投資に見合った成果が出るまではしばらくは買いません。

また、売買を成立させるのに仲介会社が割くリソースも大きく異なります。宅建業者である不動産屋が買主である場合、売主の法的責任は最も軽減されるため物件を売りやすいことに加え、そもそもプロであるため説明なども最低限で済むことが多いため、不動産業者との取引はリスクも手間もかかりません。

こうした特性の違いだけでなく、不動産業者は仲介会社とのリレーションを築くために、買うときに仲介してくれた仲介会社に売るときにも仲介をお願いすることを約束してより魅力的な物件を優先的に紹介してくれるよう、取引数を意識的に増やします。こうした点から顧客の不動産業者に反感を持たれることは避けたいというのが僕ら仲介会社の本音です。

不動産業者は何度も売買します

リスク2 取扱物件数の減少

不動産仲介業が喜ぶ媒介契約は「専属専任媒介契約」です。これは売主はその仲介会社が紹介する相手先のみと契約するというもので、売主が自分で見つけた買主とも直接契約することはできません。専属専任媒介契約を締結すると売主からの仲介手数料は確定したも同然ですし、買主も自社で探すことができれば買主からの仲介手数料ももらえるチャンスもあります。

不動産業者は自社にあった物件を優先的に仲介してもらえるようリレーションを築くため、物件を買うときの仲介会社に物件売却時に仲介をお願いすることも少なくありません。しかも、このとき不動産業者は仲介会社に「他の仲介会社とは契約しないし自社で見つけた買主とも直接売買をしないよ」と約束したうえで仲介会社と「一般媒介契約」を締結することがよくあります。

一般媒介契約は売主は複数の仲介会社と同時に物件の仲介を頼めて自社でも買主と直接契約することもできるため、仲介会社はその物件をREINSという不動産業者専用のネットワークに登録して物件情報を公開する義務がなくなります。加えて他の仲介会社とは契約しないことを約束するのでいわゆるその仲介会社でしか買えない非公開物件となり、仲介手数料を売主と買主の両方からとれたも同然となるのです。こうした「専属専任媒介契約より嬉しい一般媒介契約」をしてくれる不動産業者が顧客からいなくなるのは大変イタいわけです。

リスク3 従業員の退職

個人的に、最も影響を受けるのがこれなのではないかなとも思っています。すみふ含め不動産仲介業の営業部員は売上が人事評価の大半を占めています。今回のすみふの施策で最も割を食ったのは、不動産業者を多く顧客に持ち業績を上げてきたすみふの営業部員だということは容易に予測がつきます。

不動産仲介会社はみな同じ会社の看板を掲げて仕事をしていますが、実態としては個人事業者の集まりのようにそれぞれに顧客を抱えています。さきほど、不動産業者は仲介会社とのリレーションを築くことを重視するとご説明しましたが、これは会社や店舗とのリレーションではなく、優秀な営業部員個人とのリレーションを指すことが多いです。同じ会社の同じ店舗だとしても、無能な担当者と付き合うのは様々な観点からリスクですらあるため、付き合う相手を担当者レベルまで落として決めるのです。

なので、会社の看板がなくてもやっていける優秀な営業部員は顧客とその先にある物件を抱えて退職し、会社の看板がないと顧客をかかえられないような残念な担当者は残るという事態になるおそれは普通にあります。低リスクで話の早い不動産業者との取引だけでなくイケてる営業部員が他社に流れ、ただでさえイケていない営業部員が時間と手間のかかる個人や一般事業会社のお客様をたくさん抱えるなんて、お察しのとおり嫌な予感しかしません。

顧客のための施策のはずか顧客満足と低下につながりかねません・・・。

それでも家リアはすみふを応援したいです

ね?どんだけ勇気が要るチャレンジなのかご理解いただけましたか?上記のような影響は規模も期間も予想がつきません。弊社みたいなまだ小さい会社にはとてもじゃないですができませんし、影響力も大したことがありません。超大手のすみふだからこそチャレンジできたし、確固たる地位がある会社がやるからこそ業界への影響が期待できるのです。

当たり前ですが、いままで積み上げてきたリレーションが一方的にひっくりかえされたのですから、すみふと付き合ってきた不動産業者は少なからず大ブーイングですよ。上述したように、販売物件の仲介依頼は仕入のためのリレーション構築目的のツールとしての側面もあるので、仕入れがやりにくくなったすみふに販売仲介をお願いすることはもうもないとする不動産業者も普通にいるでしょうし、ここでは具体的には書きませんが、一部には制度の穴を突こうとする動きすらあります。

ですが、今回のすみふの施策の目的は売主の利益を守るためというコンプラの向上が目的にあると解しています。短期的(多分)な不利があったとしても、個人や一般事業会社からの信頼を獲得することでブランドを確立して長期的な利益をとりにいくことを決断した姿勢は、小さいながらも競争相手の立場の僕らとしても、心に来るものがあります

不動産屋だと名乗っただけで金に汚いような印象を持たれるような職業差別には僕らは慣れっこになってしまいましたが、それでもやはり気持ちよく仕事はしたいものです。今回のすみふの挑戦が冒頭で触れた話のように「住友不動産の変」となることを期待せずにはいられません。

ユー、やってみなよ。という人は

すみふのマインドは買うけど、パフォーマンスが落ちているかもしれないのはちょっとなぁ」という人はすみふと同じマインドを持ちながらも高いパフォーマンスを持つ当社に「お問合せ」なんでもご相談ください。すみふみたいに大胆な施策はできませんが顧客満足度は大切にしていますし、セカンドオピニオンとしてご活用いただく形でもけっこうです。なんか完全に便乗営業になっていますが、神経太く、千里の道も一歩からで頑張ります!

それでは、enjoy 家選び!

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